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研究内容

西研究室では、次世代インターネットの実現を目指して研究しています。

例えば、末端の通信システムに何も手を加えずに、あらゆる機能をネットワーク上で追加でき、かつ、それまで行っていたあらゆる通信や処理と一切干渉しない、ネットワーク透明なエッジコンピューティングインフラを提唱しています。特に、その中核となる透明アドオン・透明負荷分散技術の構築を目指してきました。

この技術をスマートシティにおける情報インフラに応用するべく、ネットワークの途中でプライベートな情報を自動的に匿名化する機能や、ネットワークの途中でインターネットからのアタックなどを検出、無害化する機能、GDPRなど新しい情報保護の仕組みに対応したPersonal Data Storage (PDS)の構築といった研究に取り組んでいます。

また、これらの提案は単なる研究としてでなく、次世代インターネットの応用としてのスマートコミュニティを実際に実現・検証する取り組みにも注力しています。長崎県ではEV150台と電力・観光のスマートアイランドを構築し、栗原市・川崎市で情報と電力を中心としたスマートシティを実施してきました。現在は、さいたま市および綱島スマートサステナブルタウンなどと共同で情報スマートシティの取り組みを進めており、豊富な地方自治体と連携したインフラ実証経験を有します。最近では農研機構と共同でスマート農業インフラ構築も進めています。さらに、関連する一般社団法人2つの代表理事を務めています。

これらの活動を社会還元するべき、技術標準化活動も取り組んでおり、IEEE標準を定めるワーキンググループのチェアを兼務しています。

2022年度テクノモールで配布した、最新の研究内容を含むパンフレットはこちらにございます。

以下の項目でそれぞれ詳しくご説明しますので、ご覧ください。

研究トピック

  • スマートシティ・スマートコミュニティ情報インフラ

スマートシティに関して、特に情報流通を活性化するための情報インフラ構築に関する研究を実施している。さいたま市のスマートシティに関する一般社団法人の会長であり、観光ICTに関する社団法人の会長でもある通り、この分野のトップランナーであり、当該研究に関しては、さいたま市が3つの賞を受賞し、個人としてもスマートシティ向け情報通信研究に対して賞を1つ受賞している。また、構築した情報インフラは、フェリカポケットマーケティング、ソフトバンク、ベンチャー企業などを通して、実運用試験なども行っている。その要素技術はこれ以降に列挙する。

  • 情報匿名化

スマートシティにおいて、住民からの情報などプライバシーが問題となる情報は、その利用価値が高く、正しく利用することで、魅力的なサービスが展開できる。一方で、プライバシー問題の解決には情報匿名化が必要であるが、匿名化によりデータの品質が低下すれば、サービス品質も低下する。つまり、情報の価値が下がる。データが持つ様々な特長をとらえ、正しく匿名化する手法の構築が必要である。これまで、スマートフォンなどの位置履歴情報の新しい匿名化や、深層学習の潜在空間を利用した匿名化などを提案しており、サービス品質とのトレードオフを制御可能な仕組みも提案している。

  • エッジコンピューティング

スマートシティサービスの提供において、その提供場所はこれまで議論されていなかった。例えば、個人情報に密接に絡み、通信遅延が問題となる、ヘルスチェック、機器制御は当然ながらIoT領域で、全体の状況をつかむため大量の情報を扱い、広域に対して行うサービスはクラウドで実施され、実際にシステムはそのような形態で構築される。この観点では、エッジはその中間にあり、ある特定の地域の情報を用いて緩く匿名化し、当該地域対してサービスする形態が想定される。また、サービスの時間的変化により、その場所も変化しうる。このような新しいエッジの考え方に基づく新しいエッジ構築技術を構築している。

  • 特定用途向けハードウェアとそのマイグレーション

クラウドは通信遅延が大きいが計算能力は高い。エッジは通信遅延は小さいが計算能力は低い。つまり、単純にはどちらが処理時間が短いかは判断できない。スマートシティサービスには処理遅延においてクリティカルな場合があるが、このような観点から、その遅延を満たすためにクラウドかエッジ化を単純に選択できない。低遅延化には、エッジであることから通信モジュールと絡めたゼロコピー処理による低遅延化、ハードウェア化による多並列パイプライン処理が必要である。また、先に示した通り、サービス提供場所の変化に追従するためのFPGA Logic Stateマイグレーションも必要であり、これを達成する技術を構築している。

  1. スマート農業

NAROと共同で取り組んでいる。特に1次産業におけるゼロエミッション化を達成するための情報通信インフラ構築を行っている。1次産業だけが2010年以降温暖化ガス排出量が増加しており、特に園芸農業において対策が求められている。深層学習を用いた空間温度分布把握といった技術を構築しているが、すべては先に示したスマートシティと同様のインフラを基本として設計されている。

  • 技術標準化

先に述べた技術、スマート農業における情報の連携、IoTに関して、IEEE-SAにおいて技術標準化を行っており、日本人で唯一2つの標準化ワーキングのチェアとして標準化をリードしている。

過去の研究

過去の研究については以下をご参照ください。尚、各リンク先のWebサイトはプロジェクト終了当時のものです。あらかじめご了承ください。

  • ネットワーク型省エネシステム・スマートグリッド
    • グリーン社会ICTライフインフラ研究センター
      緩和策だけでは対応しきれない気候変動の悪影響に備える適応策が重要との認識が、近年、高まってきました。本課題では、二つの自治体をフィールドにして、まず、メッシュデータを用いて気候変動の自治体への影響を推定し地域の脆弱性分析を行いました。その上で、センサネットワークを活用した「グリーン社会ICTライフインフラ」を開発し、家庭のエネルギー消費の情報を測定し、最適化すると共に、健康・医療や農業への悪影響など、気候変動に伴う地域の脆弱性に対応する適応策を策定し、その効果を実証しました。本課題では、ソーシャルキャピタルを高めることでresilientなコミュニティの形成を目指すという新しい社会ビジョンを実現する社会システム改革を目的としました。
    • 長崎EV&ITSプロジェクト
      長崎県五島列島を中心として、電気自動車およびそのインフラを集中投入することで、EV・PHVタウンを構築し、未来の街や生活を先行体験、調査することを目的としたプロジェクトです。IEA発刊のEV City Casebookでも取り上げられました。
    • FUSIONプロジェクト
      長崎県五島市の福江港ターミナル地区においてICTを用いた未来型の省エネルギーシステムの実証実験を行いました。
      本事業では、主に次の2つを実現することを目標としました。
      ①CO2排出量削減をはかる情報通信ネットワークに関する技術規格の世界標準化
      ②エネルギー消費量を10%削減する情報処理システムを構築
      エネルギー削減は、情報通信技術と情報処理技術を利用し、暑さや寒さなどを我慢してエネルギー消費量を下げるのではなく、施設利用者の快適さを維持しながらエネルギー消費量の10%削減を目指しました。また、駐車場内に太陽光パネルを設置し、CO2削減に貢献しました。
    • コエボハウス(慶應型共進化住宅)
      慶應型共進化住宅「コエボハウス」は慶應義塾大学の複数学部・研究科の研究室と、数多くの企業との連携により、『2030年の家』というテーマの下、先進的な技術や新たな住まい方を提案し建築、展示する「エネマネハウス2014」を機に建てられたモデルハウスです。西研究室はコエボハウスの各種設備機器とセンサーを連動させた制御システムを実装しました。快適な住環境を作るための制御システムを実現するため、まず現状把握をするべく環境のセンシングを行い、使用電力・ガス・水道量の詳細情報だけでなく、温度・湿度・照度・風速・二酸化炭素濃度をリアルタイムに計測し、快適性や人数などの推定・制御などを行いました。各種制御システムは、新しいセンサの実装や開発のみならず、既存基盤回路の解析と、新しい回路の設計、それを制御するコントローラ、さらにはそのうえで動作するソフトウェア、インターネットを介してデータベースと接続する上位サービスと、様々な技術領域の融合です。企業と産学連携し、学生がこのような制御システムを実装することで、授業では得られない学びや喜びを得ることができました。

 

  • 情報オープンイノベーションプラットフォーム(Information-based Open Innovation Platform)
    革新的なネットワークの仮想化のプラットフォームとそのアプリケーションと研究のための新世代ネットワークのR&Dプログラム。本プロジェクトはNICTからサポートを受けました。

    • サービス指向型ルーターによる新世代ネットワークの研究
      情報が無尽蔵に増加しトラフィックが肥大化し続ける現代のインターネット環境に新しい仕組みを投入し、トラフィックの軽減ならびに新規サービスの土壌を構築するため、私たちは『ルータが積極的に上位レイヤの情報を収集してデータベースで管理する、サービス指向ルータの提供の実現』に向けて研究しました。 オープンソースの公開、世界初のサービス指向ルータ開発とその展開等、ユニークな活動を行いました。
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